メルカリの世界:05 ごみが売れる!?

Submitted by 恩田重直 on Tue, 09/07/2021 - 06:00
iphone01
メルカリのスクリーンショット(株式会社メルカリ「プレスキット」より引用※1
 

 その瞬間、何が起きたのか、わからなかった。数時間前に出品したはずの商品の一つが、出品リストから忽然と姿を消したのだ。その商品は、こんなものが果たして売れるのか、と半信半疑で出品したものだっただけに、消えた理由が皆目見当もつかなかった。

 その商品とは、某百貨店の株主優待券。2,000円の購入で100円割引になるという代物で、40枚綴り。もしかしたら使う機会があるかもしれないと思い、毎年、保管しておくのだが、1枚たりとも使ったことがない。有効期限を迎えれば、ごみ箱に直行していた。

 そんな自分にとっての「ごみ」でも、検索をかけてみると、意外に出品されている事実を目の当たりにする。が、さすがに「ごみ」だけに、売れ行きは芳しくなさそうで、ごくわずかな売却済に対し、販売中が圧倒的多数を占める。そんなわけだから、出品にあたってつけた価格は、メルカリで出品する際の最低価格、送料込300円。それでも、競争相手はかなりいる。もし同額の場合、出品した順序で売れていくならば、先頭集団がまったく見えない、そんな状況である。出品する以上、あわよくば売れて欲しいとは思っていたが、どうせ売れないだろうという頭に支配されていた。

 思い込みとは恐ろしいもので、商品が消えた瞬間、売れたと思考する回路は全くもって持ち合わせていなかった。まさかとは思い、一応、メルカリからの電子メールを確認したが、特に通知はない※2。そんな状況に、慣れない初出品で誤ってデータを削除してしまったのではないかとか、メルカリのシステムに不具合でも生じたのではないか、などと考えつつ、再出品してみた。画面の一部の変化に気づいたのは、そんな時だった。

 

やることリスト
やることリスト(「始めてでもできる!! らくらくメルカリ便で発送する方法」『HAZIMARU』2017.10.10より引用)

 

 「ホーム」画面の上部に、「✓」で表示された「やることリスト」という項目があり※3、赤丸の白抜き数字で1が表示されているではないか。そこをタップしてみると、出品した商品が購入され、支払も確認したので発送しろ、というメルカリからの指示だ。どうやら商品が消えたのは、購入されたからだったらしい。唖然とした。今一度、電子メールを確認してみる。すると、同一内容のメッセージが届いていた。どうやら、単に電子メールの受信に、ちょっとした時間差が生じてしまっただけのようだ。そして、「初売り」の嬉しさ以上に、その直前にとった自らの行動で、再度、慌てふためくことになる。

 商品は1つしかないのに、二重に出品してしまったことに気づいたからだ。慌てた。冷汗をかきながら、慣れない画面と向かい合い、再出品した商品の削除に取り掛かる。この間に、購入されてしまわないことを祈りつつ。幸い、再出品した商品が購入されてしまうことはなかった。そして、ほっと胸をなでおろす。落ち着きを取り戻すにつれ、「初売り」の嬉しさが込み上げてくる一方で、数ある同一商品の中から、なぜ選ばれたのかという疑問が頭をもたげてきた。確かに、この商品に限れば、最安値ではある。しかし、最安値は他にもたくさんあるのだ。

 こればかりは、購入者に聞いてみなければ、わからない。街頭インタビューのように、さらっと聞いてみたいものである。「数ある商品の中から、なぜこれを選んだのですか」と。実際、メルカリの「取引メッセージ」の機能を使えば、そこでのやりとりは、出品者と購入者しか見られないので※4、内容が赤の他人にさらされることなく、聞くことは可能である。しかし、せっかく購入してくれた相手に、購入後に煩わしさを与えてしまうようで、聞くことが憚られる。実のところ、これまでの取引で、何度となく、この質問を購入者にぶつけてみたいと思った。けれども、未だ聞くに至っていない。

 ともあれ、「初売り」は、メルカリにはまる体験であったことは、間違いない。(つづく

 

『メルカリの世界』(目次)

はじめに:メルカリ現象を読むということ
01 海外からアクセスできない!
02 見えてくる底辺転売ヤーの実態
03 底辺転売ヤーの採集方法
04 転売ヤーに売る人たち、転売ヤーから買う人たち

第1章:変わる価値観
05 ごみが売れる!?
06 メルカリ中毒のはじまり
07 「ごみ」から「在庫」へ
08 後塵の「ごみ」屋の奮闘

 

永江朗『インタビュー術!』(講談社、2002.10)を、Amazonで見る↗

 

 

小山田紘子著、染谷昌利監修『メルカリ完全マニュアル』(秀和システム、2020.12)を、Amazonで見る↗

 

 

この記事を共有する?