メルカリの世界:06 メルカリ中毒のはじまり

Submitted by 恩田重直 on Wed, 09/08/2021 - 06:00
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メルカリのスクリーンショット(株式会社メルカリ「プレスキット」より引用※1
 

 「初売り」事件以来、メルカリにどっぷりと浸かることになった。「いいね!」がついたり、消えたりするたびに一喜一憂し、購入されれば、嬉しさの余り舞い上がる。そして、一刻も早く届けるべく梱包作業に追われ、間髪入れずに配送業者に駆け込んだ。

 さすがに寝食を忘れることはなかったが、完全に生活の主導権をメルカリに握られた。それが、年末年始だったこともあり、メルカリ中毒は瞬く間に重症化した。大掃除の最中、日がな一日、携帯電話を握りしめていたような気がする。

 

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 携帯電話を握りしめながら、大掃除なんてできるわけがない。だが、それには理由があった。「初売り」事件が起きたのは、廃棄まで秒読みとなった不用品の数々が、部屋の一隅に山をかたちづくりはじめた頃である。「ごみ」が売れたという経験は、その山を見て、売れるかもしれないと思わせるのに十分だった。だから、「ごみ」か否かの最終判断を、メルカリに委ねたのだ※2。つまり、「ごみ」の商品名や姿、かたちでもって、メルカリ上の出品物を一々検索してみたのである。

 するとどうだろう、さっきまで「ごみ」にしか見えなかったものが、立派な「商品」に見えてくるではないか。これほどまでに、捨てられない大掃除は記憶にない。そして、「ごみ」とともに、年を越すこととなる。

 ところで、ヨーガ用語の一つとされる「断捨離」という言葉が※3、片付けの一つの方法、考え方として使われるようになって久しい※4。近年では、片付けの代名詞として確立した感すらある。メルカリが、不用品を取引する場であることが関係していようが、利用者の中には、プロフィールや商品の説明文に、この言葉を使う人が散見される。中には、ニックネームに使用されている方もおられる。そこで、断捨離に込められた意味を『ウィキペディア』で確認すると、次のようになる。


「断捨離」とは、不要な物を「断ち」「捨て」、物への執着から「離れる」ことにより、「もったいない」という固定観念に凝り固まってしまった心を開放(ママ)し、身軽で快適な生活と人生を手に入れようとする思想である。

(「断捨離」『ウィキペディア』※5

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 この説明が的を得ているのか否かは、原著で確認する必要がある※6。ここでは、合っているという前提で考えると、面白いことに気づく。

 それは、断捨離と称して、メルカリに物を出品することの矛盾である。つまり、「もったいない」という観念から解放されるために、不用な物、すなわち出品物をメルカリで売却することで、その物との関係を、「断」ち、「捨」て、「離」れることを想定しているのであろうが、そのしがらみにまみれた「物」をメルカリに出品するという行為は、まさに「もったいない」という発想からきているのではないか……ということである。

 そして、もし売り捌くことができなければ、その出品物から解放されず、逆に縛られることは容易に想像できる。気のせいだろうか。少なくとも、筆者の場合、もったいない以外の何ものでもない。(つづく

 

『メルカリの世界』(目次)

はじめに:メルカリ現象を読むということ
01 海外からアクセスできない!
02 見えてくる底辺転売ヤーの実態
03 底辺転売ヤーの採集方法
04 転売ヤーに売る人たち、転売ヤーから買う人たち

第1章:変わる価値観
05 ごみが売れる!?
06 メルカリ中毒のはじまり
07 「ごみ」から「在庫」へ
08 後塵の「ごみ」屋の奮闘

 

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