メルカリの世界:07 「ごみ」から「在庫」へ

Submitted by 恩田重直 on Thu, 09/09/2021 - 06:00
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メルカリのスクリーンショット(株式会社メルカリ「プレスキット」より引用※1
 

 さて、そんな昨年暮れの大掃除は、コロナ禍で自宅にいる時間が増えたこともあり、例年になく大掛かりに実施した。いつか使うかもしれないと、納戸に保管しておきながら、ほとんど使ってないものや、箪笥や押入の奥底にしまい込んで忘れているものなんかも、改めて引っ張り出してみた。

 捨てるか否かを分別し、廃棄の決断を下した最前列に鎮座していたものに、大量の紙袋があった。そう、百貨店などの買物で、ほぼ漏れなくもらえる手提げ袋である。ちなみに、幸いといっていいのだろうが、自治体による「プラスチック資源」の回収日が先に巡ってきたこともあり、衣料などを購入した時に、商品を入れてくれるプラスチック・バッグは大量に廃棄した直後のことであった。

 

 

 この紙袋、商品を購入すれば、その商品を入れて、もらえるものである。が、そのブランドの価格帯を示しているかのように、高価格帯であればあるほど、見るからに材料費、製作費がかかってそうな代物である。そんなわけだから、ブランドの価格帯が高ければ高いほど、捨てきれずに保管してあった。

 早速、メルカリに聞いてみた。その検索結果に、目を疑った。先の株主優待券は金券であるが、それよりも充実した市場があったのだ。しかも、出品者の売り方も、価格も、千差万別である。どこかのクレジット・カード会社の宣伝ではないが、プライスレスという、紙袋だけを金銭では買えないことが、不透明な価値を生み出しているということなのだろうか。

 検索結果から、売れる法則を読み取ろうとするが、皆目見当もつかない。たとえ、同じブランドの同じ紙袋であっても、安いから売れているわけでもなく、れっきとしたバッグがメルカリで買えそうな、目が飛び出そうな価格で取引が成立しているものもあるのだ。筆者には「ごみ」にしか見えない紙袋が、である。果たして、そこに資本主義経済の法則は見出せるのであろうか。

 廃棄寸前の「ごみ」から「商品」という活路を見出された紙袋は、一転、「在庫」と化した。そして、メルカリで後塵の紙袋屋として、出品すべく売り方を考える。不可思議な取引が多い中、売れる法則を導き出すことは困難をきわめそうだったが、取引成立の如何にかかわらず出品事例には事欠かない。なので、それらを一つずつ丁寧に眺めた。

 真っ先に感じたのは、高価格帯のブランド恐るべし、ということ。出品者の強気な価格を見ては、慄いた。紙袋の「在庫」は大量にあれど、残念ながら、高価格帯のブランドは皆無に等しい。なので、ほとんど参考にならない。もし今後、これらのブランドを購入する機会があったら、購入した商品はその場で身につけ、紙袋は未使用のまま、大事に持ち帰ってきたい。

 事例観察を重ね、朧気ながら見えてきたのは、売れていないものには共通点がありそうだ、ということ。まず、複数のブランドのまとめ売りは意味がなさそうだ。これから紙袋を出品するという立場で考えれば、「ごみ」を一気に処分してしまいたいという願望は、わからないでもない。でも、「××ブランドだけをお譲りいただけませんか」などのコメントを見れば、一目瞭然、買い手はそれを望んでいない。やはり、興味のないブランドは、「ごみ」なのだろう。

 それから、単品、つまり紙袋1枚というのも問題がありそうだ。もちろん単品でも、おそらく、ブランド力とか、大きさが非常に大きいといった特殊性とかで、売れているものは、ちらほらある。しかし、メルカリ最低価格、すなわち送料込300円でも、かなり売れ残っているような気がする。もし、価格が問題ならば、メルカリではこれ以上、下げられないので、手の打ちようがない。

 そして、この延長線上に、一部の出品者の価格設定の問題も指摘できそうである。つまり、紙袋を複数枚売る際に、最低価格300円を単価として、それに売る枚数を掛け合わせて、価格を算出していそうな出品例が結構あるのだ。具体的には、2枚だと590円、3枚だと880円、……という具合に。確かに、価格計算しやすいが、購入者から見れば、複数枚買うんだからもっとおまけしてよ、という感覚があるのではないだろうか。

 で、これらから導き出した結論は、同じブランドで統一し、梱包材に詰められるだけ詰め込んで、お得感のある価格で出品するということ。これで、方針は決まった。あとは、実践あるのみ。(つづく

 

『メルカリの世界』(目次)

はじめに:メルカリ現象を読むということ
01 海外からアクセスできない!
02 見えてくる底辺転売ヤーの実態
03 底辺転売ヤーの採集方法
04 転売ヤーに売る人たち、転売ヤーから買う人たち

第1章:変わる価値観
05 ごみが売れる!?
06 メルカリ中毒のはじまり
07 「ごみ」から「在庫」へ
08 後塵の「ごみ」屋の奮闘

 

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