メルカリの世界:08 後塵の「ごみ」屋の奮闘

Submitted by 恩田重直 on Fri, 09/10/2021 - 06:00
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メルカリのスクリーンショット(株式会社メルカリ「プレスキット」より引用※1
 

 まずは、在庫の確認から。抱えている商品の状況がわからなければ、出品どころの話ではない。ごみを分別するように、商品在庫をブランドごと、大きさごとに分類した。商品たる紙袋は、瞬く間に、居間一面にあたかも絨毯のように広げられた。

 次に、この分類をもとに、出品に向けた商品の組合せを考える。その上で鍵となったのは、配送方法である。つまり、着払か、送料込か、からはじまり、どの配送業者の、どのサービスを使うか、ということである。そして、この配送方法は、配送料はもちろんのこと、梱包とも密接に関係してくる。

 

 

 そもそも紙袋は、商品を購入すればもらえるという感覚のある※2、価格があってないような代物である。なので、高額な取引は望めない。だからこそ、利益に直接響いてくることになる配送料や梱包費は、可能な限り抑えたい、というのは山々である。ところが、ほどなくして、この配送方法が、非常に悩ましいことに気づいた。

 着払を想定して、配送料を度外視するのであれば、組合せは自由自在になる。しかし、たとえ着払で出品したとしても、ひとたび購入希望者が現れれば、「送料はどのくらいですか」とのコメントがつくのは必至であろう※3。出品後に、配送料に関するコメントをやりとりする手間暇を考えると、着払という選択肢は、早々に消えた。いずれにしても、出品前に配送料を把握しておく必要はありそうだ。

 周知のように、配送料は配送業者ごとに、梱包の大きさ、補償や追跡の有無などで、事細かく料金が設定されている。出品しようとしている紙袋は、旧来の郵便物の分類でいうところの、定形郵便に収まりそうにない※4。そうなると、定形外郵便ということになるが、この料金体系は、基本的に重量で料金が決まってくる※5。自宅にある秤で、梱包した商品を正確に測れればよいのだろうが、窓口で宛名ラベルを貼ることなどをはじめ、ちょっとした誤差で想定していた配送料よりも前後してしまうことが、十二分に考えられる。なので、梱包作業の管理が比較的しやすい、大きさでもって定額の料金となるサービスを優先的に利用することにした※6

 この定額のサービスは、配送業者によって若干異なるが、ほぼA4大の大きさで、厚さが3cm以内、重量が1kg以内であれば、全国一律200円以内に収まるという配送方法である※7。配送料は、このサービスを利用しなくとも必ず発生するので、支出は止むを得ない。あとは、梱包をどうするか、という問題を考えなければならない。

 すぐに思い浮かんだのは、梱包材の再利用。これなら、新たな出費はいらない。で、いろいろ試してみたのだか、どうにも、詰められるだけ詰めようとすると収まりが悪い。その要因は、手提げの紙袋に付いている取っ手にある。取っ手部分の厚みがかさばり、予想外に厚くなるのだ。そこには、厚さ3cmの世界がある。

 紙袋をうまく固定する方法が見つからず、重なり具合によって、厚さが変化してしまう。これでは配送業者に持ち込むまでに、ずれて厚みが増し、配送業者の計測を通過できるか、心許ない※8。そんな余計な精神的苦痛は感じたくないので、結局、必要経費と割り切って、市販の規格サイズで設計された薄型段ボールの箱を購入してみた。

 

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 早速、詰めてみる。まずは、入れやすさを優先し、箱よりも小さめの紙袋を選んだ。化粧品ブランドのもので、A5ほどの大きさである。6枚が余裕で入った。価格は迷ったが、どうも一般的な紙袋セット販売の売却事例の上限が600円弱ぐらいにありそうに感じたので、それよりも安い500円にしてみた。そして、説明文も書き上げ、出品した。

 するとどうだろう。果報は寝て待て、というが、寝る間もなく、入浴している間に、売れてしまった。出品から売却成立まで、ものの5分足らずの出来事だったようだ。驚きと嬉しさで、舞い上がったのは言うまでもない。

 とはいうものの、なぜ売れたのかが、わからない。ブランドなのか、価格なのか、売り方なのか……。いずれも購入者に聞いていないので、確信にまでは至らない。ただ一つ、確実に言えるのは、出品時に購入者が探していたということである。おそらく、同じ手口で再度、出品しても、取引が成立するか否かは、未知数であろう。

 このごみシリーズ、最近、見つけた出品物に、空き瓶、空き缶がある。お酒をはじめ、食品や飲料、香水などなど、紙袋に負けず劣らない市場が形成されている。「残り香つき」なんて文言には、ぐっとくる。粗大ごみをはじめ、ごみの処分に料金が発生するようになって久しいが、どうやら、ごみの観念を見直す時期が到来しつつあるようだ。

 そんなわけで、長引くコロナ禍の中、巣ごもりでメルカリ中毒に冒され、「ごみ」から解放されない生活がはじまった。例年になく、片付けられた昨年末の大掃除であったが、「ごみ」に代わって「在庫」が我が物顔で居座ったのである。(つづく)

 

『メルカリの世界』(目次)

はじめに:メルカリ現象を読むということ
01 海外からアクセスできない!
02 見えてくる底辺転売ヤーの実態
03 底辺転売ヤーの採集方法
04 転売ヤーに売る人たち、転売ヤーから買う人たち

第1章:変わる価値観
05 ごみが売れる!?
06 メルカリ中毒のはじまり
07 「ごみ」から「在庫」へ
08 後塵の「ごみ」屋の奮闘

 

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